クルマのミライNEWS

自動車コラムニスト 山本晋也がクルマのミライに関するニュースやコラムをお伝えします。

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プラグイン

ホンダ量産車史上最高の熱効率を持つアコードハイブリッド

つき抜けたクルマであること
我慢のいらないエコカー
新しい世代の乗り物
i-MMDを伝統にしたい
すべての要素で世界一を目指した


仕事用のメモを整理していたら、こんな箇条書きが出てきました。

これ、先日発売された「Honda Style (ホンダ スタイル) 2014年 08月号」でのアコードLPL氏へインタビュー取材のまとめとして、開発における情熱をキーワード的に並べたもの。

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アコードハイブリッド&プラグインハイブリッド。非常に優等生的なイメージもあり、また2モーターのフルハイブリッドということで、ホンダらしさが薄まっているような印象もあるかもしれません。

しかし、そうイメージしてしまうのは、間違いだというのが、このインタビューで理解できたのでした。

その個人的な思いは、見開き・約3000字のインタビューにお目通しいただければと思いますが、ポイントとなるのはアコードハイブリッド専用といえる『LFA』型エンジンにあり。以前のエントリでも、最高出力105kWと控えめな、この2.0リッター・アトキンソンサイクルエンジンの最大熱効率は量産車トップなのではないかと書きました。

すなわち、エンジンはそこそこにフルハイブリッド化によって燃費性能を稼ぐという話ではなく、最高のエンジンをハイブリッドに組み込んでいると思えたのです。

実際インタビューでは、「ハイブリッドシステムもガソリンエンジンも、最高のユニットを作り、それを最適に組み合わせたのがアコードハイブリッドのパワートレイン」といった内容が聞けたのでした。それが、冒頭のメモにある『すべての要素で世界一を目指した』の意味するところ。

たとえばエンジン、このインタビュー記事でも触れていますが、BSFC(正味燃料消費率)が214g/kWhというのは公式発表されております。

このBSFCを元に、ガソリン1リッターあたりの熱量34.6MJ、比重0.8、1kWh=3.6MJという数字を当てはめ、最大熱効率を計算すると、214g=0.2675Lとなり、9.25MJの熱量を投入して1kWhの出力ですから、おおよそで39%の熱効率ということ。今回の記事では参考程度に、この数字を出しております。

ガソリンの比重、製品によっても異なるので、甘めの数値としたのでした……そして記事の表記として39.0%ではなく、39%としているのにも意味をもたせているつもりですので、ご理解いただければ幸いです。




ところで、アコードの二宮LPL、自分よりも若い方でした。


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いまさら年齢でどうこういうのもナンセンスですが、自動車メーカーのプロジェクトリーダーというと、それなりの経験が必要な傾向があって、そこそこベテランの付くポジションというイメージでありますが、気づけば自分も年齢だけは、その域になっているのでありました。翻って、自身のパフォーマンスを考えると、まったくもって恥ずかしい限り。



精進します(汗)

CEATEC JAPANで再確認、プラグイン車の普及には非接触充電がキーになる?

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外部充電するクルマの一般名称としてプラグインビークルなどとも呼びますが、ようは充電プラグを刺すことが、従来の燃料を使う自動車との違いとして区別できるというわけ。

ですが、プラグインという呼び名は意外に短い期間で消えて、死語になってしまうかもしれません。


というのも、非接触充電が増えてきそうという予感をCEATEC JAPANにて、あらためて感じたから。

その理由は非常に単純。CEATEC JAPANはテクノロジー系の展示会でありますから、クルマ関係でいうとEVの充電器も多数展示されていて、なかには「最軽量、CHAdeMOコネクタ」といった煽りと共に飾られていたりするわけ。そうしたコネクタを持つたびに「これを毎日扱うのはちょっとイヤかもな」と感じてしまうのです。

いや、コネクタ自体はだいぶスムースにインできるよう改良されていますし、持ちやすさ・外しやすさでも進化しています。

しかし、コネクタにつながる電線の重さと曲がりづらさからくるハンドリングの悪さは、とくに急速充電のCHAdeMOでは老若男女が使うことを考えると気になるレベル。急速充電を家庭用として日常的に使うことは考えづらいところですが、たとえば集合住宅などではCHAdeMO充電器の共有というのは、あり得るシチュエーションですし。いや、普通充電にしてもV2Hを考えると、クルマを動かすたびに抜き差しする前提となりますから、その煩わしさは普及に伴いネガティブ要素として表面化してきそう、と思うわけです。

その解決策としては、やはり非接触のチャージシステムが有効なのは、言うまでもないところ。効率云々という指摘もあるでしょうが、いわゆる普及段階にステップアップするには、そうしたユーザーの手間をクリアした方法を標準化していかないと難しいのかな、とあらためて思った次第。いや、前々から考えていることなので、まさに再確認したというだけですけれども。


まだまだ、規格統一というフェイズではないでしょうが、そろそろ規格統一についてユーザーも意識してウォッチ、リクエストしていくべきタイミングかな、とも思うわけで。せっかく便利になっても複数の方式が存在して、使い勝手が悪いということになってはナンセンスですから……。 

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※画像はいずれもイメージです(汗) 

S500 プラグインハイブリッドの威風堂々エンジンルーム

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メルセデス・ベンツの最上級モデル「Sクラス」のトップグレードとなる「S500 プラグインハイブリッド」、ダウンサイジング指向の3.0リッターV6ターボエンジンに、そこそこ高出力なモーターとリチウムイオンバッテリー、そして名前の通りに外部充電機構を備えた『3リッターカー(3L/100km)』なわけですが、そのエンジンルームの画像は、そうしたプラグインハイブリッドらしさを可能な限り排除したという印象。

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というよりも、カバーや吸気レイアウトによりV8エンジンにも見えるというか、見た目はダウンサイジングに逆行していて、むしろ大きさをアピールしているような印象。

このクラスのオーナーがエンジンルームを眺めて、クルマを評価するとは思えない部分もありますが、メルセデス・ベンツが、このクルマに想定しているユーザー層が保守的だということの現れなのかもしれない、などと想像してしまうわけです。

これがアーリーアダプター的なユーザーへの訴求であれば、エンジンの実際以上に小さく見せて、モーターや高圧配電線を目立たせるといった、真逆のアプローチになるような気もしますが、さて。


BMW i3は、量産レンジエクステンダーEVの第一号か?



ミライのクルマに注目するクラスタ界隈では、BMWのピュアEVかつレンジエクステンダーEV「BMW i3」が旬の話題となっておりますが、おそらく、これは初めての量産レンジエクステンダーEVではないかと思う今日このごろ。

いや、まずは22kWhのリチウムイオンバッテリーで、航続距離130~160kmのピュアEVに注目すべきなのでしょうが、正直にいってEVとしてのスペックに目新しさはなし。日産リーフが24kWhで228km、三菱i-MiEVが16kWhで180kmなので、いくら計測モードが異なるとはいえ、想定の範囲内。正直にいえば、Cd値0.29という空力性能、アルミシャシー&カーボンボディで軽量化というプロフィールからすると、もうちょっと頑張ってほしいところ。仮に日本のJC08モードで200~220kmくらいだと、重さと総電力量からすると順当で、驚きはありませんから。

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というわけで、自ずと注目は、あくまでもオプションとして用意されているレンジエクステンダー仕様になってしまいます。

レンジエクステンダーEVというのはエンジンで発電モーターを回し、その電力で駆動モーターを回している点で、いわゆるシリーズハイブリッドと似ています。その意味ではプリウスや今度のアコードハイブリッドなどの電気式CVTの部分と同じシステムと思ってしまいがち。


でも、それは間違いだと思うのです。



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シリーズハイブリッドというのは、あくまでもエンジンで発電して、それによって駆動モーターを動かすわけです。単純化すると、そのシステムには二次電池がなくても構わないというか、二次電池がなくても成立するのがシリーズハイブリッドといえましょう。もちろん、エネルギー回生や効率を考えると二次電池は必要なのですが。仮に二次電池がないと考えるとエンジンの発電能力>モーターの出力でなければなりません。二次電池を考慮しても、エンジンの発電能力≒モーターの出力であるのがシリーズハイブリッドといえましょう。

一方、レンジエクステンダーEVは、外部給電のかわりに、車両に搭載した発電機(エンジンと発電モーター)によってバッテリーを充電するのが基本にあるので、発電機で生み出した電力をそのまま駆動モーターが消費するというフローは考慮していないとするのが妥当。シリーズハイブリッドではドライバーのアクセル操作(駆動モーターの要求)に合わせてエンジン出力を変化させる必要もありますが、レンジエクステンダーEVでは、バッテリーのSOC(充電状態)だけを見て、発電機を作動させればいいというのが基本になります。ですから、モーターの要求する出力にレスポンスさせる必要もありません。そうした部分はバッテリーが完全に担当、クルマが走っていようが止まっていようが、SOCに応じてエンジンは淡々と発電していればOKというのがレンジエクステンダーEVの考え方。

それゆえ、BMW i3は最高出力25kWというエンジンで問題ないわけです。しかもスペックを見ると最高出力・最大トルクとも同一回転で発生しているので、一定回転で動かす前提のエンジンではないかと想像できるところでもあり。冒頭で記した『初めての量産レンジエクステンダーEV』というのは、ここがポイント。これまで、もっともレンジエクステンダーEVに近い存在だったシボレー・ボルトにはごく一部とはいえ、エンジンで直接タイヤを駆動するトルクフローがあるようなので、むしろシリーズ・パラレルハイブリッドといえますし。

もちろん、現時点はBMW i3にもそうしたトルクフローがないとは断言できませんが、ピュアEVが基本にあるわけで、レンジエクステンダー用エンジンをオプションで積んだときに駆動系を作り変えるというのは生産規模からすると、ほとんど考えられません。よって、このモデルが量産レンジエクステンダーEV第一号と捉えて妥当なのでは、と思う次第です。

もっとも、振り返るとトヨタ初のハイブリッドカーである「コースターハイブリッド」を再考察する必要ありかも。当時はシリーズハイブリッドに分類されていましたが、そのエンジン出力を考えると、レンジエクステンダー寄りだったといえるかもしれません……。





 

アコードプラグインハイブリッド、欧州では展開しないと予測


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発売は、北米で先行していた、アコードプラグインハイブリッドが日本でも正式発表されております。逆に北米市場ではプラグインでないアコードハイブリッドが10月発売という逆転現象が起きているのもおもしろいわけですが、それはさておきアコードプラグインハイブリッドについての、ちょっとした予想をひとつ。

プラグインハイブリッドということは、すなわち外部充電対応で、まずはバッテリーの電気を使って走って、電気が足りなくなるとエンジンを始動させるという仕組みが基本。そして、この手のプラグインハイブリッドにおいては、それほどバッテリー総電力量が大きくないことから急速充電には対応せず、普通充電オンリーというのもトレンド。

ですから、アコードプラグインハイブリッドも左フロントフェンダーに用意している外部充電口は、普通充電に対応したものがひとつあるだけ。そして、その規格はSAE J1772となっております。
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じつは、このプラグインハイブリッドには日本発の急速充電規格であるCHAdeMOポートも備わっています。それは外部給電を行なうためのアウトプット口としてトランク部分に用意されているのでした。

CHAdeMOポートを使って外部給電するというのは、日産も三菱も行なっていることなので、そうした技術の流れにあるのかと思いきや、外部給電を行なう装置が独自仕様で、他社との互換性はないのだとか。

主に官公庁に収めるプラグインハイブリッド車としては、それぞれに外部給電装置を持たないといけないのは非常に不便ですし、仮にユーザーが間違えて、A車にB社の装置をつなぐと使えないというのでは、緊急時のユーザービリティとしては疑問。上記のケースでいえば、B車にA社の装置をつなごうとして動かないという状況とセットになりかねません。ましてプラグインハイブリッド車と外部給電装置を持ち出すというのは、震災のような非常時と思われるわけで、そうした混乱の中で 同じCHAdeMOのコネクターを使っている外部給電装置を、きちんとメーカーごとに把握して現場に持っていく ということを要求するくらいなら、CHAdeMOの通信機能を使って、複数のメーカーに対応した外部給電装置を、各社相談の上で用意して、そこは共通パーツとして展開するほうがミスの可能性が減ると思われ、現段階ではベターなのでは? と思う次第。


閑話休題

ところで、こうしたプラグインハイブリッド車は欧州でも増えつつあり。最近ではポルシェ・パナメーラS eハイブリッドが話題を集めたりしておりますし、BMWやVWもプラグインハイブリッドを展開しようとしています。

ならば、アコードプラグインハイブリッドも欧州で展開する可能性はあるのか? といえば、おそらくノーと予想。欧州といっても広く、様々な地域性もあるでしょうが、少なくともドイツでの展開はなさそう。

その理由は単純で、アコードプラグインハイブリッドは充電口としてSAE J1772しか用意していないと思われる節があるから。
以前『日米欧、プラグイン自動車の充電口を改めて思う』というエントリーで触れたように、少なくとも、ドイツで展開するのであれば IEC 62196-2 Type 2 規格の充電口の採用について考慮していないと現地での普及は難しいでしょう。勝手に予想すれば、ドイツに本社を置く各社がプラグインハイブリッドを展開している中で、日本から参入しようとしても壁に阻まれるので、最大規模の市場といえる北米と異なる規格については展開を考えないというのも、現時点でのボリュームからすると合理的な判断だと思うのではありますが。


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画像は、BMW 「コンセプト アクティブツアラー」の充電口。IEC 62196-2 Type 2はSAE J1772 と異なるのがわかるでしょうか。
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