クルマのミライNEWS

自動車コラムニスト 山本晋也がクルマのミライに関するニュースをお伝えします。

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スモールオーバーラップ

超高張力鋼板を多用しすぎで心配になるボルボ新型XC90のスチールフレーム

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Seven per cent of the safety cage in the original XC90 was made of hot-formed boron steel.
The structure in the upcoming cars built on the new Scalable Product Architecture (SPA) feature over 40 per cent hot-formed steel, which translates into significantly improved strength but without adding mass or weight. The all-new XC90, illustrated in this image, will be launched in 2014.
※太字は当方で追加したもの。

というわけで、2014年に登場予定というボルボの新型XC90がスチールフレームを公開。画像からもわかるように、丈夫なウルトラハイテン(日本でいう強度980MPa級以上の超高張力鋼板)がABCの各ピラー、そしてバルクヘッドの足元付近に使われております。

もはやモノコックというより、このウルトラハイテンの部位を抜き出してスチールケージと呼びたくなる雰囲気さえあって。見方を変えると、いわゆるハンドリングなどに影響する剛性についてはモノコックとしてボディ全体で生み出し、衝突に対してはウルトラハイテンの配置によるロールケージをビルトインした的な設計により担保するのが、いまのトレンドと思う次第。もちろん、ウルトラハイテンは軽量化のために使うのが正しい目的なのでもありますから、ロールケージ的な重量増という意味ではありません。

それにしても、バルクヘッドの下半分・広範囲にウルトラハイテンを使っているのはIIHSのスモールオーバーラップをかなり意識しているという気もしないではありませんが……。


そして、ここまでボディを強くしてしまうと、キャビンが無変形になってしまう対策として、前後のクラッシャブルゾーンで衝突エネルギーを吸収しないと、乗員のG変化が大きくなりそうという心配もありますが、さて?


こちらは2014年モデルのスモールオーバーラップ衝突試験の動画、ご参考まで。

インフィニティQ50(和名:スカイライン)のスモールオーバーラップ試験はGood評価に非ず



おなじみIIHSのフロント・スモールオーバーラップ試験。その最新動画の中に1.2GPa級のハイテン材を積極採用したという日産のインフィニティQ50(和名:スカイライン)のテストシーンがあったので注目。

しかし、スモールオーバーラップの総合的な
結果はアクセプタブルで最良のグッドには至らず。その内容を見れば、ほとんどの部位でグッドながら、やはり足元の損傷がマージナルでありました。

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側突にはかなり強靭なボディになっていそうな雰囲気ではありますし、通常の前面フルラップ&前面オフセット衝突においても気を配ったハイテンの使い方という印象を受けるのではありますが、一般論でいうと強いところ設けると、弱いところが潰れやすくなるわけですが、このボディで気になったのはAピラーとフロアのつながる辺り。

前述で「やはり」と付けたのは、人テクにてホワイトボディを目にした際に、スモールオーバーラップで足元を守るキーになるであろうAピラーの付け根周りが気になって、説明員の方にも話を伺っていたりしたからなのでありました。その際の解答は「この部分は問題には、ならないであろう」というものでありましたが……。

まあ、Aピラーの付け根が気になるというのは、素人の戯言ではありますし、衝突試験の課題が一箇所の改善だけで済むとも思えないのでもありますが。しかしながら、継続生産車の2014年モデルではなく、ニューモデルの2014年モデルにおいて、スモールオーバーラップでグッドをとれなかったのは事実。きっと現場はカイゼンに向けてスタートしているのでありましょう。


ちなみに、こちらはマツダ3(和名:アクセラ)のスモールオーバーラップ試験。 評価はグッドでありました。
 

スモールカーのスモールオーバーラップ試験、合格したのは6モデル

Performance in small overlap front test earns 6 small cars
 good or acceptable ratings and Top Safety Pick+ award


The 2-door and 4-door models of the Honda Civic are the only small cars to earn the top rating of good in the test. IIHS evaluated the Civics earlier this year and released the results in March. The Dodge Dart, Ford Focus, Hyundai Elantra and 2014 model Scion tC earn acceptable ratings.
IIHSの実施する、スモールオーバーラップ(25%オフセット)衝突試験は、それがリアリティあるものかどうかの議論は別として、ほとんど差別化が難しい状態だった衝突安全性能に、まだまだ違いがあることを明確にしたテスト。とくに初期のテスト結果は、その対策をしていない車両も多く、各メーカーの車体設計余力のようなものが見て取れるともいえるものでありました。

そんなスモールオーバーラップ試験が、ついにスモールカーをターゲットに実施されたとかで、テストの動画がYouTubeに続々とアップされております。評価は、Good/Acceptable/Marginal/Poor の4段階。現段階では、GとAが合格ラインと捉えるのが妥当。


で、Goodになったのはシビック(2ドア/4ドア)だけ。シビックについてはAピラー根本の変形も少なく、このスモールオーバーラップで心配になるドライバーの左足への攻撃性もかなり少ないという印象。

そのほか、Acceptableはフォード・フォーカス(4ドア)、ダッジ・ダート、ヒュンダイ・エラントラ、サイオンtCの4台。

Margnalは、シボレー・クルーズ、シボレー・ソニック、フォルクスワーゲン・ビートル。

Poorは、日産セントラ、キア・フォルテ、キア・ソウルという結果。

というわけで、GoodからPoorまでの衝突試験シーンをピックアップ。ぶつかった瞬間の映像では差が感じられないものもあれば、ひと目で”ヤバい”感のあるモデルもあり。いろいろな意味で見応えあり。それはさておき、トヨタが、このスモールオーバーラップをクリアしたのはtCが初めてかもしれません……。
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では、一気にどうぞ!

Overall evaluation: Good


Overall evaluation: Acceptable








Overall evaluation: Marginal


Overall evaluation: Poor




再生せずとも、サムネールで、Aピラーどころかルーフまでポキリと逝っているように見えるクルマは、やはり心配になります、ハイ。

ベンチマークというか評価基準は多様なもの、というツイート集




ゴルフは世界のベンチマークというのは本当か、などというエントリを先日アップしたわけですが、それに関連したツイートをしていたことに気付いて、まとめ的に。

ともかくベンチマークというか、評価基準というのは、開発段階でも評価段階でも、ある程度は絶対的なものとして固定しないと先に進めない部分はあるにせよ、そこに固執してしまうのも間違いの元だな、と思う次第。

たとえば、最近でいえば、アメリカのIIHSがスモールオーバーラップという新しい衝突試験を始めて、それによって従来の試験では差別化できないくらい高レベルに見えていた各社の各モデルに、大きな違いがあることが明らかとなりました。その試験に意味があるかどうかという議論は置いておいて、これなどは基準が絶対的なものではなく、ちょっと基準(ぶつける場所)を変えただけで、評価が変わってしまうという好例。





そうした評価方法のひとつだけでなく、いわゆるベンチマークとして評されることの多いゴルフにしても、仮にゴルフが満点になるような評価軸を作って、それに他車をあてはめて、評価することに果たして意味があるのかという点も考える必要がありそう。

もちろん、ベンチマークとして誰もが認める存在であれば、まずはそれをキャッチアップすることが第一とはいえますが、衝突試験からもわかるように 絶対的な基準が存在しないのは自明。

そもそも、設定した評価項目において同じ数値を満たしているとしても、その評価項目では見落とす要素があれば、同じものになりせんし。

さらにいえば、設定した評価項目において同じレベルを目指すことで、仮に違う項目でのアドバンテージを失うようでは本末転倒。

先日、レーシングカーの開発秘話的なインタビューをした際に「シーズン前の開発ではインフィールドでのコーナリング性能を追求して目標のラップタイムに達したが、いざ開幕するとストレートでの加速がライバルに劣っていて、実際のバトルで厳しい状況だった」なんていう話もありましたが、ある評価項目を追求するときに、そこに情熱を注ぎすぎて、他の項目を見落としてしまうなんてこともあるわけです。

世界中のユーザーの用途がひとつのはずはなく、様々なニーズに合わせるために多様な製品が生まれていることを考えると、ベンチマークというのは、あくまでひとつの参考値であって、そこに絶対的な価値を求めてはいけないという、至極当たり前の話に帰結するのです。





もっとも、AとBを比べたときに、あらゆる評価基準を持ってきても、Aの優位は揺るがないなんてケースがあることも想像できますから、基準を変えれば評価が入れ替わるとは、必ずしもいえないのではありますが。

それでも数値では見えない価値観や満足度を刺激する製品というのもありますしー。


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