クルマのミライNEWS

自動車コラムニスト 山本晋也がクルマのミライに関するニュースをお伝えします。

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エミッション・環境

イギリスは2035年からエンジン車の新車販売を禁止という報道。そこにあるリアリティ

いまから社会インフラを整備をするとして15年あればゼロエミッションビークル社会に移行できる……のか?
United-Kingdom
報道によるとイギリス政府がガソリン車とディーゼル車の新車販売を2035年に禁止することを発表したそうで。以前の発表から5年前倒ししたのに加え、販売禁止の対象にはハイブリッドカーも含めたというのが、今回の発表の肝。プラグインハイブリッドについての言及は不明ですが、基本的にはゼロエミッションビークルだけの新車販売に絞るという話でありましょう。

なぜなら、この流れでプラグインハイブリッドカーを対象に入れたとしても、その運用はEVと同様になると考えられるから。この発表(決定)が揺るがないものだとすると、平均車齢を15年だと仮定しても2050年前後にはガソリンスタンドというビジネスモデルはほぼ不要になるわけで、そんな終わりの見えているビジネスに固執する経営者がいるとは思えないから(一部に趣味で残す人はいるかもしれませんが)。



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CO2排出量の問題プラス都市部の大気汚染がZEVの推進力になると予想

効率やバランス面では内燃機関を程よく使うことも重要ですが、ゼロエミッション化の優先順位が上がっていると感じる昨今
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自動車に限らず、モビリティ業界全般、いや産業界を含めた社会全体での環境対応というのは急務。とくに気候変動への対策と、その手段としてのCO2排出量削減は、その象徴といえるでしょうか。また、先進国・途上国を問わず都市部での大気汚染(スモッグ)というのは定期的に話題になるところ。日本は目に見える大気汚染(黒煙などのPM系)については他国に先んじてクリアした感はありますが、それでも夏場には光化学スモッグが発生することもあり。内燃機関を使っている限り、大気汚染のリスクは常に背負っている状態といえるわけです。

走行中に排ガスを出さないゼロエミッション車であれば大気汚染のリスクがゼロになるかといえば、生産や発電などの過程で発生する分がありますからそうとはいえないのでしょうが、それでもリスクを抑えることにはつながるはず。CO2排出量の削減と同時に大気汚染への対応を考えると、少なくともパーソナリティモビリティについては再生可能エネルギーを利用したゼロエミッション車を走らせるという方向に向かうだろうというのが、いろいろと眺めてきた上での個人的な予測。自動車メーカーが、そこまでは考えていないというのは理解しつつも、資本経済の仕組みからすると社会的なニーズが生き残る商品を生むわけで。ともかく次世代モビリティを予測するには、CO2排出量削減だけでなく大気汚染の視点も常に持っておく必要があるとは思う次第。もちろん、コネクテッドや自動運転といったテクノロジーも重要なピースになりますから、いずれにしても単純な話にはならないのでありました。

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CO2排出量の制限と経済発展を両立させるCO2処理というアプローチ

新たに出したCO2を確実に処理できれば、いくらでも排出できる?
earth_bad
パリ協定からのCO2排出量削減という課題に対して、少なくとも自動車業界としては電動化を進めているものの…といった状況でありましたが、国連気候変動サミットにおけるグレタ・トゥーンベリ氏の鬼気迫る演説によって、あらためて気候変動への対応が急がれるというムードになっております。CO2排出と気候変動の関係についての議論は置いておくとして、ひとまずCO2排出量を削減し、大気中のCO2濃度を下げなくてはならないとすると、ほとんど経済活動ができなくなる(結果的に人間を減らすしかない)という話もあるようです。しかし、それは対策としては下の下でしょう。経済活動と環境対応を同時に行なう方法はないものでしょうか。

たとえばCCS(Carbon dioxide Capture and Storage 二酸化炭素回収貯留)というテクノロジーがあり。発電所や工場の煙突から排出されるCO2を、その段階で捕まえ大気放出することなく、なんらかの方法で貯め込んでおくというものであり、コストを無視すれば実現可能な技術。当然、コスト(投入エネルギー)が現実的なレベルでなければ普及しないでしょうし、環境対策として有効にならないわけですが、少なくとも排出段階でCO2をあらかた捕捉できるとすれば、経済活動と環境対応は両立する可能性が高まるわけです。

さらにいえば、CO2を貯留するのではなく炭化水素燃料としてリサイクルできれば(もちろんエネルギー収支があっていないと無意味ですが)さらに良しといえそう。化石燃料を使う工場で捕えたCO2を再生可能エネルギーによって燃料化して、別の用途で使うというサイクルが合理的に成立すれば、実質的には新たにCO2を排出したとはカウントせずに済みますから。
再生した燃料でクルマを走らせるというのもありかもしれませんが、それですべてのニーズを満たすというのは難しそう。自動車においては走行状態で機能するCCS的なテクノロジーを搭載するよりも、大元でCO2を捕まえてしまうほうが合理的でしょう。つまり、自動車単体として見るとCO2を出す内燃機関は消滅して、電気や水素で動くゼロエミッションビークルが中心になるであろうと考えられるわけです。



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ガソリンと軽油の発熱量と二酸化炭素排出量

haiki_gas


クルマについての知識があるひとにとっては「ディーゼルエンジンは二酸化炭素排出量も少ない」のはもはや常識となっている感もあります。そのせいか「ディーゼルはガソリンエンジンよりも燃費がいいから二酸化炭素も少ない」と単純化しているケースも見受けられますが、はたしてそうでしょうか? じつはディーゼルとガソリンの燃料消費と二酸化炭素排出は単純に比較できないので、こうした誤解めいた話が広まっているのは不思議。

まず燃費が優れるという点について。

実際に燃費(燃料消費率)でいえば軽油をつかうディーゼルエンジンは明らかに優れています。たとえば国産車として唯一のクリーンディーゼルであるエクストレイルで比較すると、ガソリンが13.2km/L で ディーゼルが15.2km/L。

もちろんディーゼルサイクルの効率の良さが効いているわけですが、消費燃料でいうと元々の燃料が持つエネルギーの違いも無視できません。

簡単にいうと同じ容積(1リッター)あたりの熱量が大きい燃料を使えば、同じような走らせ方をしたときの燃費に優れるのは当たり前の話。

しかも、その発熱量が炭素を元にしたものであれば、熱量が多いほどにCO2は増えるわけです。だからこそ『燃料消費と二酸化炭素排出は単純に比較できない』のであります。

たとえば石油系の液体燃料の1リッターあたりの発熱量は以下の通り。

ガソリン=34.6MJ
軽油=38.2MJ
灯油=36.7MJ
ジェット燃料=36.7MJ
A重油=39.1MJ
C重油=41.7MJ
潤滑油=40.2MJ
【参考資料:資源エネルギー庁 エネルギー別発熱量表】

石油系ということは炭化水素。そして発熱量の大きさは炭素成分の多さを示しています。つまり発熱量≒二酸化炭素排出量といえるのです。

では、ガソリンと軽油の二酸化炭素排出量は?

ガソリンが2322gCO2/L

軽油が2624gCO2/L。


ここから軽油の二酸化炭素排出量はガソリンの約13%増し、ということがわかります。簡単にいうと1割以上燃費(燃料消費率)がよくないとディーゼルのほうが二酸化炭素排出量は少ないとはいえない、のです。

再びエクストレイルを例にあげて燃費と二酸化炭素排出量の数字を並べれば、以下の通り。

ガソリンが13.2km/L(176g-CO2/km)
ディーゼルが15.2km/L(172g-CO2/km)

燃費の差ほど二酸化炭素の排出量は変わらないのでありました。それでもディーゼルのほうが少ないですが。


つまりクルマが使っている燃料だけから見るとディーゼルとガソリンの二酸化炭素排出量を比べるには燃費の数字だけではダメ。消費燃料に二酸化炭素排出係数を掛けて計算しないといけないわけです。


とまあ、ここまではクルマ単体での燃料消費における話。いわゆる「Tank to Wheel」での二酸化炭素排出量については、ガソリンに対してディーゼルのほうが1割以上燃費がよくなければ少ないとはいえない、ということです。


しかし、話はこれだけでは終わりません。

「Tank to Wheel」=「燃料タンクからタイヤを回すまで」よりも話の大きな「Well to Wheel」=「井戸(産油)からタイヤを回すまで」というスケールで考えるべし、という見方もあります。環境問題的には、むしろコチラのほうが主流といえるでしょう。

たとえば国土交通省のデータによれば「Well to Wheel」での単位発熱量あたりのCO2発生量は ガソリンが78.4kg-co2/GJ 軽油が73.9kg-co2/GJ となっています。


それぞれ、ガソリン=34.6MJ 軽油=38.2MJ という数字から リッターあたりに換算すると ガソリンが2712gCO2/L 軽油が2823gCO2/Lとなります。

というわけで、「Well to Wheel」で考えると、軽油0.96Lとガソリン1Lの排出する二酸化炭素が同等だから、燃費でいえばほぼ数字通りに二酸化炭素排出量が変わってくるといえるわけです。であれば、サイクル理論的に燃費性能に優れるディーゼルは二酸化炭素排出的には優等生といえましょう。

ですが、原油から軽油だけを製造できるわけではありません。

ガソリンも同時に”精製”されることを考えると製造時の発生量を考えるのはフェアでないと思う次第。蒸留で分離しなければ軽油も出来てこないわけですから。もっともガソリンは蒸留後の処理が多いことで製造時の二酸化炭素排出量が増えているのではありますけれど。

ちなみに、上のイラストにもあるように、当たり前ですが原油の精製以外での採掘や輸送での二酸化炭素排出量はガソリンと軽油で同じ。なお単位を変えて製造時の二酸化炭素排出量を示せばガソリンが293.3gCO2/L 軽油が160.3gCO2/L となります(JARIによるデータ)。

というわけで、冒頭に記したように『ディーゼルはガソリンエンジンよりも燃費がいいから二酸化炭素も少ない』というのは、「Well to Wheel」で考えると、結果としては間違ってはいないのですが、果たして製造時での違いまで考えての発言なのか、その点に疑問を感じる今日この頃なのでありました。

ガソリン1リッターの発熱量は34,000kW?

car_gasoline


SI単位で仕事量の単位はJ(ジュール)、そして仕事率はW(ワット)。その関係は以下の通り。

W=J/s

そしてレギュラーガソリンの発熱量は約34.5MJ/L(ハイオクで約35MJ/L)ですから、ガソリンを1Lを完全燃焼させたときに発生する仕事率、すなわちパワーは34,500kWとなります。
たとえばポルシェ・パナメーラターボの最高出力が368kW(500PS)ですから、ガソリン1Lの持つ熱量がいかに大きいかわかろうというもの。というよりも大きすぎると思えてきます。パナメーラでいえば燃料タンク容量は100L(ハイオク)ですから、3,500,000kW相当の燃料を抱えているわけです。

というわけで、もういちどジュールとワットの関係式をみれば

W=J/s

ジュール・パー・セク、「一秒間に」という条件があるのでした。
つまりハイオクガソリン1Lを1秒間に完全燃焼させたときに発生させられるパワーが35,000kWということなのです。
ここから逆算して、言い方を変えると「パナメーラのガソリン満タン状態とは1時間連続して972kWのパワーを出しつづけられる」となります。さらに単純計算すれば「最高出力を出し続けたとして2時間半連続走行できる」となります。

おっと、これは数字遊びでありまして、真に受けないでください。

W=J/sではありますが、ご存知の通り発熱量≠軸出力でもあります。当たり前ですが、ガソリンの発熱量をすべて軸出力にできるわけではありませんので。


空燃比の話なんて書いたのは……

唐突に空燃比の話題をあげたのは、ふたつのことが気になったからであります。

ひとつは、この時期になると目立ってくるマフラー出口からの水蒸気を、マフラー内に溜まった水分“だけ”と思っている人がいるらしいってこと。
ガソリンにしろ軽油にしろ基本は炭化水素だから水素を含んでいるわけで、燃焼(酸化)するということは二酸化炭素と「水」を排出するのは不思議な話ではないですから。

もうひとつが、先日の光化学スモッグ・シンポジウムにて「日本国内でいえば窒素酸化物については固定排出源(大工場など)と移動排出源(自動車)が同じくらい」という話を聞いたこと。
固定排出源については、かなり規制を厳しくしたことで窒素酸化物の排出量が減ったが、自動車はまだまだ厳しさが足りないらしいのです。それは、いわゆるポスト新長期規制でもまだまだという意味。そんなわけで、これからクリーンディーゼルと呼ばれるクルマが続々と出るのかも知れませんが、リーンバーンである限りは窒素酸化物の排出から逃れられないわけで、考えるところがあったから。

しかし、こうして改めて整理するとアタマがすっきりするものです。

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