水素燃料電池トラクターヘッドは2020年代の発売を目指す。パワートレインはFCVとEVのハイブリッド方式

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以前、動画でもお伝えしたようにEU(欧州連合)は水素社会に進むことを宣言しているわけですが、自動車業界で水素社会に対応するソリューションが燃料電池車。そして、動画内でもお話したように水素社会≒電動化社会でありますので、乗用車についてはシンプルな構造でコストダウンが進みやすいであろうBEV(電気自動車)に進むと考えられるわけですが、長距離を走り、また積載量を稼ぎたい商用車(トラックなど)については水素燃料電池のほうが特性的に”合っている”と考えるのが妥当。

というわけで、欧州自動車メーカーにおける燃料電池のリーダー的存在のダイムラー(メルセデス・ベンツ)が燃料電池のトラクターヘッドを発表しております。トラックでありますから大トルクが求められるのは当然ですが、そのスペックは乗用車感覚では、まさしく桁違いでありました。


Interaction between battery and fuel-cell systems

The two stainless-steel liquid-hydrogen tanks intended for the series version of the GenH2 Truck will have a particularly high storage capacity of 80 kilograms (40 kg each) for covering long distances. The stainless-steel tank system consists of two tubes, one within the other, that are connected to each other and vacuum-insulated. In the series version of the GenH2 Truck, the fuel-cell system is to supply 2 x150 kilowatts and the battery is to provide an additional 400 kW temporarily. At 70 kWh, the storage capacity of the battery is relatively low, as it is not intended to meet energy needs, but mainly to be switched on to provide situational power support for the fuel cell, for example during peak loads while accelerating or while driving uphill fully loaded. At the same time, the relatively light battery allows a higher payload. It is to be recharged in series-production vehicles with braking energy and excess fuel-cell energy. A core element of the sophisticated operating strategy of the fuel-cell and battery system is a cooling and heating system that keeps all components at the ideal operating temperature, thus ensuring maximum durability. In a pre-series version, the two electric motors are designed for a total of 2 x 230 kW continuous power and 2 x 330 kW maximum power. Torque is 2 x 1577 Nm and 2 x 2071 Nm respectively. 

引用した部分から主なスペックを抜き出して整理すると以下の通り。

水素タンク容量:80kg
燃料電池出力:300kW
モーター定格出力:460kW
モーター最高出力:660kW
モーター定格トルク:3154Nm
モーター最大トルク:4142Nm
二次バッテリー総電力量:70kWh
二次バッテリー最高出力:400kW

引用文にも書いてあるように、タンクとモーターについては二個セットで載せているそうなので、上記の数値は合計値であります。単品での性能は半分の数値になるわけですが、それにしてもトルクの大きさには驚くばかり。

トラック系ではトルクが重要なのはわかっていても、この大トルクは既存のディーゼルエンジンと比べても大きく上回っている数値で、かなり乗り味としてもスムースとなっていると予想されるのでした。スムースな走りは安定した輸送にもつながりますから、まずは精密機器の運搬といったニーズから燃料電池トラックは広がっていくかもしれません。

そして割合に大きめの二次バッテリーを使うことで燃料電池システムの負担を軽減すると同時に、しっかりと回生によるエネルギー回収を行なうというフローも、車両全体でのエネルギー効率を高めるためには必要なのだろうな、とも思うところであります。

ちなみに、スペックを見てもわかるように最高出力領域では燃料電池と二次バッテリーの両方から電力供給をすることが前提となっているパワートレインであります。

というわけで、冒頭で記したEUの水素社会に関して、自分なりに考察している動画はこちら。お時間のある時に、ご覧いただけますと幸いです。



そして、こちらの動画はメルセデス(ダイムラー)の電動化戦略について考察しているもの。主なテーマは乗用車領域ですが、会社規模からすると幅広くゼロエミッションのR&Dを進めているのはさすがといったところでありましょうか。








ちなみに、日本を代表する自動車メーカーであり、燃料電池(水素社会への対応)にも力を入れているトヨタは配送用の小型トラックから北米で使われるトラクターヘッドまで幅広い燃料電池トラックへのアプローチをしております。ダイムラーの発表を見て「日本は欧州に遅れている!」と言いたくなるかもしれませんが、けっしてそういうわけではありませんので、念のため。









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精進します。

  




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