エンジン始動時に吸気バルブの遅閉じをすることで圧縮するエアを減らすのが振動減のポイント



2.0リッターエンジンとモーターを組み合わせ、基本的にはエンジンで発電しつつ、モーターで駆動。高速域などではエンジンダイレクト駆動モードも持つ「e:HEV」というハイブリッドシステムを搭載する新型アコード。その高速試乗において燃費性能をメインテーマにお話させていただいたのが、こちらの動画。

燃費を稼ぐポイントについては、本ブログエントリの後半で整理しますが、まずはエンジン始動時のNV(ノイズ&バイブレーション≒音振性能)が非常に高いレベルにあるという話から。ハイブリッドシステムの特性上、エンジンは回ったり、止まったりを繰り返すわけですが、始動時にまったくイヤな感じもなければ、違和感もなく、正直エンジンが始動したかどうかもわからないレベルの音振性能に仕上がっていたのは新型アコードのチャームポイント。この動画では、25秒あたりに「エンジンマウントやモーターによる振動の吸収では?」といった予測をしていますが、恥ずかしながらまったく外しておりました。

ホンダでは電子制御エンジンマウントを過去に採用して、エンジンに振動と逆位相に動かすことで音振を向上させたこともありますが、新型アコードについてはオーソドックスなマウントを使っているのだとか。では、どうやってエンジン始動時の振動を減らしているのか。その肝はバルブタイミングの制御にありというのです…。




 

単純化してまとめると、エンジン始動時のブルンという振動は主にピストンが圧縮した空気によって起きるというのがホンダのエンジニアの考え。そこで、エンジン始動時に限り、圧縮行程になっても吸気バルブを開けておいて、圧縮するエアそのものを減らすことで、始動時のシリンダー内にあるエアを減らして、振動を軽減しているというわけ。つまり、超ローコンプ(低圧縮)エンジンとすることで始動時の優れた音振性能を達成しているということでありました。その吸気バルブの遅閉じ具合といえば、アトキンソンサイクルで実施しているよりもずっと遅く閉じているということでありますから、圧縮するエアの減らし具合がどれほどのものか推して知るべしであります。

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さて、今回の試乗では本田青山ビルを起点に、首都高~東名~新東名というルートで島田金谷ICでUターンするという往復405kmのルート。ドライブモードは(スポーツ/ノーマル/コンフォート)を随時切り替えながら、エコドライブをしやすくするECONについては全行程オフにしての走行でありました。その全区間での平均燃費は、メーター表示で22.8km/LとアコードのWLTCモード燃費とちょうど同じ数値。WLTC高速道路モードは22.6km/Lですので、カタログ値超えといえる結果ですが、けっしてエコドライブをしたわけではないのでした。





なにしろ、こちらの動画でも示しているように新東名まで足を伸ばしたのは120km/hで走って、アコードをどう感じるかを知りたいというのが目的で、当然ながら120km/h区間ではしっかりとアクセルを踏んで加速したりしております。大人しく80km/hあたりで巡行していたわけではありません。とはいえ、120km/h走行時にも、もちろんアコードに標準装備される先進運転支援システム「ホンダセンシング」のACC(アダプティブクルーズコントロール)はフル活用したのでヒューマンエラー的なラフなアクセル操作は最小限になっているはず。

つまり自動運転レベル2の機能に走りを任せて、ドライバーは様々なチェックをする余裕が生まれるというわけです。というわけで、ハイブリッドの作動状況示すアニメーション表示や瞬間燃費を見比べながら、どのようにして燃費を稼いでいるのかを知ることができたというのが、冒頭に貼った動画のメインテーマ。結論からいえば、一定速度で走っていても駆動状況は目まぐるしく変化しており、可能な限りエンジンを止めてしまうことでトータルでの燃費を稼いでいるというのが個人的な印象。

もっと具体的にいうと、120km/h巡行時はエンジンダイレクト駆動モードと、バッテリーの電力を使うEV走行モードを交互に繰り返しているのですが、エンジンダイレクト駆動モードの際にはタイヤを回すだけでなく、発電機も回してバッテリーを充電しているというのが、おそらく肝と感じた次第。

一般論的な予想になりますが、エンジンが最大熱効率に近い状態で回るためには、適切な回転数と適切な負荷が必要。おそらく120km/h巡行の際にエンジンダイレクト駆動モードでタイヤを回すだけでは適切な負荷が足りないのでしょう、その足りないぶんを発電機を回すことで辻褄を合わせ、エンジンのおいしい領域を使おうとしているのだろうと思われます。そうやってバッテリーに電気が溜まったところでエンジンを止めてバッテリーから電気を持ち出してモーター駆動で走ることができるわけです。

当然、エンジンを止めているときは燃費を稼ぐことができます。なにしろ、燃料消費がゼロなわけですから。エンジンダイレクト駆動モードでは15kmを走るのに1リッターの燃料を消費していたとして、その後EVモードで7kmを走ったとすると、全体としては22km/Lの燃費になります。これは、計算しやすくした例ですが、大まかにいえばこのように走行モードを切り替えながら走ることで燃費を稼いでいるのが、アコードのやり方。

内燃機関の感覚でいうと、一定速で走っているときには燃料消費も一定になっていると考えてしまいますが、アコードのようなハイブリッドカーではまったく違うロジックでクルマは動いているのでした。当然、実際にはこんなに単純な話ではなく、アクセルペダル操作やACC走行であれば先行車の加減速によって刻一刻と状況が変わる中で、瞬間瞬間に最適な制御をしているので、とても人間の頭で理解できないレベルの演算をしているのでしょう(汗)

アコードに限った話ではありませんが、ホンダがe:HEVを説明する際には、バッテリー電力だけで走行するEVドライブ、エンジンで発電してモーター駆動するハイブリッドドライブ、エンジンで直接駆動するエンジンドライブの3モードを適切に切り替えていると書いているはずですが、本当の肝はエンジンドライブモードでの発電にあると思うというのが、400kmを走って感じたことのひとつだったりするのですが、さて?

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精進します。

  




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