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フォルクスワーゲンのディーゼルスキャンダルについて、禁断の制御プログラム切り替えを行なったことは明らかになりつつありますが、その目的については、いまだ明確に指摘されていないという印象。

自分自身、先日のエントリでは「ドライバビリティをエミッションに優先させた」という風に書きましたが、現実的に考えて、強烈なディーゼルのライバルがいない市場においてリアル・ワールドでのドライバビリティを優先する意味というのはあるのかと、いえばおそらくノー。

もちろん、市場での走りにおける好印象というのは重要な商品性ではありますが、これだけの危ない橋を渡るインセンティブにはならないだろうな、と思うわけです。



仮に測定時だけEGRを増やすことで温度を下げ、NOxの生成を抑えているとして、そこで考えられるのは、後処理能力を低くできる(コストダウン)というメリットでしょうか。

ただ、それであれば日常域と切り替える必要はないはずで。加速時などは別の補正をかけることは禁止されていないでしょうから、Defeat Device に手を染めなくともドライバビリティを確保することは可能であったろうとも思う部分もあるわけです。

だとすると、エミッション関係でひとつ考えられるのは被毒などによって劣化した触媒であっても、検査をクリアできる数値を出すため。

ネガティブな見方をすると、劣化した触媒で基準をクリアするために、NOx排出量を減らすことを優先したプログラムを走らせる必要があったということでしょうか?







さて、現時点で、フォルクスワーゲンが認めているのは旧型のEA189ディーゼルに関する問題ですが、EPAとCARBの対象リストには最新のEA288ディーゼル搭載車も載っていて、なかなか微妙な様子。

そして、EA189についてもNOx吸着触媒を使った第一世代とSCRを使った第二世代の両方が対象となっているのが興味深いところ。ちなみに、EA288にはDPFにSCRコーティングを施した第三世代の後処理装置が使われているのであります。

それはともかく、CARBの指摘によれば、北米ではDEF(Diesel Exhaust Fluid)と呼ばれる尿素水=AdBlueを、SCRを働かせるに十分な量を吹いていないと指摘しているのであります。SCRの性能維持のために被毒を解消するための温度上昇(VWが実施しているかは未確認)を誤認しているとは思えませんし、おそらく。

dosing was not sufficient to keep NOx emission levels from rising throughout the cycle.


●参考リンク:CARBからVW USAへのコンプライアンスレター(画像・英文) http://www.arb.ca.gov/newsrel/in_use_compliance_letter.htm

このレターにおける表記が第二世代に限った話なのか、第三世代も含むのかは不明なのでありますが(ソースのご指摘など、いただければ幸いです)、フォルクスワーゲンの主張を信じればEA189エンジンの使っていた第二世代までに限った話なのでしょう。一方で、EPAのリストからは第三世代も明確にシロと判断していないという意思が見えるのでありました。

というわけで、NOx吸着触媒だけでなくSCRにおいても測定時のみエミッション性能に有利な制御をするメリットとは? 

ユーザー的にはAdBlueの消費が抑えられるというメリットがありましょうが、そのためにメーカーが危ない橋を渡るのは、また理解しづらいのでありました。

このあたりの狙いと事情、今後明らかになってくるのでありましょう。

精進します。














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