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日本のような道路環境ではCVTが優位でも、アメリカではステップATが人気で、欧州はDCTが次世代トランスミッションとして支持されている……というトレンド話もありましたが、どうやらホンダは北米市場でもCVT推しでいくようで。

というわけで、以下ニュース発表から引用。

Honda、メキシコに新トランスミッション工場の建設を決定
ホンダ・デ・メキシコ・エス・エー・デ・シー・ブイ(以下、HDM)は、現在新四輪車工場を建設しているグアナファト州のセラヤ工場敷地内に、約4.7億USドル(約447億円※)を投資して、年間生産能力約70万台規模の四輪車向けトランスミッション工場を建設することを発表しました。

新トランスミッション工場は、CVT製造において圧倒的な競争力を持つグローバル供給基地と位置づけ、新四輪車工場と同一敷地内に建設することでメキシコのインフラを最大限活用した高効率な生産体制を構築します。新トランスミッション工場は、2014年春の四輪車完成車ラインの稼働開始に続いて2015年後半に稼働を開始する予定で、初年度の年間生産能力は35万台規模の予定です。2016年後半には70万台規模へと拡張し、従業員はフル生産時で約1,500人を予定しています。

メキシコ新工場はHondaにとって3番目の北米トランスミッション工場となり、これによりHondaの北米におけるトランスミッションの年間生産能力は現在の137万5千台から2016年には200万台超へと増加します。

Hondaは、「需要のあるところで生産する」という考えに基づき、1979年9月に米国で二輪車の現地生産を開始し、1982年11月には日本の自動車メーカーとして初めて米国で乗用車の生産を開始しました。以来、北米での現地生産を拡大し、2013年3月までの北米における四輪車の累計生産台数は2千5百万台を超えています。

HDMの現在の四輪生産能力は年間6万3千台となっており、2014年春予定のセラヤ新四輪車工場の稼働開始により年間生産能力は26万3千台へと増加します。また、2012年のメキシコ国内での四輪車の販売実績は5万4千台(前年比150.6%)と着実に販売台数を伸ばしています。

この手の投資は、地元への経済効果をアピールすることも多く、それはそれで政治的には重要なのでしょうが、気になるのはCVTの生産ラインを北米市場向けのクルマを作るメキシコ工場に新設するという点。

つまり北米市場にもCVTを拡大していくという意思表示。思えば、スバルもリニアトロニックと名付けたチェーン式CVTを全世界的に投入していますが、それは生産規模との兼ね合いで複数の変速機を用意しづらいという面もなきにしもあらず、という印象。

ですが、ホンダの場合は現地生産が基本ということもあって、それぞれの市場にあわせた組み合わせが可能なはず。となれば、アメリカでも今後はCVTが主流になると予想しているのか、アメリカでのニーズにホンダとして応えるにはCVTへシフトするということが想像できるわけ。

もともとホンダは独自の平行軸式ステップATを採用しているのが特徴ですが、これは遊星歯車を使わない点でAMTとトルコンを組み合わせたというイメージのシステム。現在のトランスミッションに求められるのは、エンジンの熱効率に優れた領域を外さずに、あらゆる加速状態・速度への対応ですから、ホンダ式のステップATでそれを実現する、すなわち多段化・変速のクロス化を進めると重量が重くなる一方で将来が見えないのかもしれません。

仮に、エンジンベイに余裕のある北米市場向け中・大型車に専用CVTを拡大することを考えると、生産規模を考慮すると専用の大きめなCVTを用意できるでしょうし、ミッションケースを大きくできれば、CVTのキーとなるふたつのプーリー間の軸距離をとれるので、変速比幅を広くできるというメリットもあり、と予想する次第。


トヨタのハイブリッドシステム担当エンジニア氏の受け売りですが、「多段ミッションでも、CVTでも、ハイブリッドでも、クルマが内燃機関を使っている限り、燃費性能やパフォーマンスを高めるには、エンジン効率が最大になるところをキープするのが狙いであって、そのアプローチとしていろいろな方法があるに過ぎない」わけです。

果たして、なにが正解になるのかはわかりませんが、ともかくエンジンと変速装置それぞれ単独での性能ではなく、協調制御を含めた、パッケージで考えないといけない時代なのは間違いないところでしょう。