R06AMRワゴンのフルモデルチェンジに合わせて、スズキが軽自動車用の新エンジンを積んだというのは既報のとおり。

それが「R06A」型。これまでの流れをうけた3気筒エンジンです。


軽自動車の規格が660ccになってからのスズキのエンジンといえばF6A・K6Aという3気筒のシリーズが基本的な流れ。途中1992年あたりにF6Bという4気筒DOHCも登場していますが、あくまでスペシャリティモデル専用の特別なユニットでありました。

その基本スペックは以下のとおり。

F6A:ボア65×ストローク66mm

K6A:ボア68×ストローク60.4mm

R06A:ボア64×ストローク68.2mm


軽自動車用ということもあって、排気量はほぼ同じわけですが、3気筒エンジンという共通点はあるものの、ボア×ストロークでみるとかなり違うイメージ。いや、F6AとR06Aのボア×ストロークが近いイメージなので、基本的なキャラは似ているのかもしれません。

というわけで、歴代のスズキ660cc・3気筒エンジンについて思い出してみようと考える次第。まずF6Aは鋳鉄ブロックのタフなキャラクターというイメージが強烈。基本はSOHCヘッド、DOHCはスポーツバージョンという位置づけでありました。ブロックは丈夫ではありましたが、およそ80kg(ターボ)という重さはいま見ると欠点といえましょうか。

一方で、少々ロングストローク気味なプロフィールながら高回転域までシュンと回るのが感触としての印象深いところ。スペックからは想像できない”ハイレビング・エンジン”なのであります。


その次の世代となったK6Aは基本がDOHCで、SOHCは市販バージョンには存在しません。また上で整理しているようにショートストロークなプロフィールとなっているのも特徴。将来的にストロークを伸ばすことで軽自動車の規格変更に適応させようという狙いがあったのかと思うほどのショートストロークぶりは実用エンジンとは思えないほど。またアルミブロックの採用により軽くしたのが特徴で、デビュー当初の単体重量は68kg(ターボ)。アルミオイルパンなどのマイナーチェンジにより最終的には約53〜61kgへと軽量化が勧められております。

また以前、当ブログで触れたこともありますが、将来的なロングストローク化を睨んでブロック高のある設計なので、コンロッドが長いのも特徴で、そのせいか連桿比は3.771(F6A:3.327)とかなりピストン側圧の少ないプロフィールとなっているのも好印象。

かといってスポーティな性格かといえばそうでもなく。基本がDOHCということは、実用的なDOHCエンジンとして仕上げられているということ。スペックから想像すると期待はずれといえるほど中間トルクに振ったキャラクターを感じます。



そしてMRワゴンから搭載がはじまった「R06A」は、K6Aとは異なり、完全に660ccという排気量を考えた設計というイメージ。ボア径をコンパクトに、ストロークを伸ばすというプロフィールへ一新されています。単にロングストローク化と聞けば、より回らないというか、つまらない実用エンジンを想像してしまいますが、R06Aのボア×ストロークがF6Aに近いことを考えると、もしかするとキレのあるシュンとしたフケを味わえるエンジンになっているかもという期待も膨らむところ。

このあたりは、個人的に乗ったことのないエンジンなので、完全に想像ではありますが、ロングストロークだからといって否定する必要はないと考える次第。

とくに、ライバルとなるダイハツの主力エンジンとして2005年にデビューしたKF型エンジン(ボア63×ストローク70.4mm)も、同じくロングストロークなプロフィールながらヒュンと回る軽快なフィーリングなのですから。

このKF型エンジンといえば単体重量およそ47kgという軽量さもウリですが、後発のR06Aが約52〜56kgと後塵を拝するカタチになっているのは残念というか、ターゲットとしていなかったというか。また、この重量に収まったなんらかの理由があったのだとしたら、それはそれで気になるところではありますが。

そんなわけで、名機とうたわれたF6Aのキャラを現代的にアレンジしたというか、最新の技術で復活させたエンジンなのではないかと勝手に想像して期待を高めているところ。あんまり自分の中でのハードルをあげてしまうと失望してしまうかもしれませんが、それはそれ。近いうちに触れてみたい気になるエンジン、それがR06Aです。