以前、ブレーキシステムを理解するための「エントロピーの法則」なんてエントリを書いたことがあるのですが、あらためて言葉を変えて整理すると、いまのメカ・ブレーキの性能を決めるのは、熱容量であって、ディスクブレーキのそれはローターサイズ(=重量)によるのが基本となります。

ですから素材が同じであればローターは重いほどよく、厚みが決まっているのであれば径を大きくするのが手法となり、大径ローターとは熱容量を増やすための選択といえます。

しかし、自動車雑誌工学的には、ローター径拡大の効果について、摩擦の場所が車軸から離れることによるテコの原理で……といった説明しかされていないのも事実。たしかに摩擦の生じる場所から車軸までの距離(ブレーキ有効径)が伸びれば、車軸にかかるブレーキトルクは大きくなります。それによってブレーキの効きはよくなるわけですが、そもそも制動力は摩擦力×ローター径で決まるもので(より正確にいうならば「ホイールシリンダー径・ブレーキ有効径・摩擦係数などのブレーキファクタ」によります)、単純に制動性能を上げるだけなら摩擦力アップ、チューニング的にいえばブレーキパッドの交換だけでいいわけです。

つまりローター径を拡大するということは、それだけではない性能を求めているわけで、すなわち冒頭で書いたように容積(重量)を増やすことによる熱容量アップが本来の目的。熱容量が少ないと、熱変換によってローターに溜まった熱エネルギーが飽和状態になった後は変換することができなくなり、ブレーキが効かなくなるわけ。一方、熱容量を増やすと、同じだけの減速(熱エネルギー発生)をした場合の熱上昇が抑えられるので、ブレーキ性能を安定して発揮できるようになります。それこそが大径ローターを採用する理由であり、目的。ブレーキトルクの向上は副次的なものだと思うのですが……。いや、こんなこと常識なんですけどね。なぜか副次的な要素が目立っているような気がしませんか?

もちろん耐久性を考慮すると、ブレーキパッドの摩擦係数はある程度の範囲で決まってきますから市販車(ノーマル状態)におけるローター径は制動性能を示すファクターではありますし、また前後バランスを想像することもできるものですけれど。チューニングの手段としての大径化は一発の効きよりも連続走行での安定性を求める手段ということは覚えておきたいものです。そして、そのキーになるのは径でなく容量(重量)であるということも。

なおひとつ気をつけたいのは容量を増やすということはバネ下重量の増加につながりますから、単純に重いローターにすればいいというわけではないこと。また厚いソリッドディスクのようなカタマリのほうが容量は増えますが放熱性能には劣るので、放熱性をあげることで容量をカバーするというほうが有利、それがベンチレーテッドディスクが主流になっている理由ですね、あらためて言うまでもありませんが。

car_kyuu_brake


-----------------
精進します。
  




人気ブログランキング