クルマのミライNEWS

自動車コラムニスト 山本晋也がクルマのミライに関するニュースをお伝えします。

YouTubeチャンネルで動画を公開しています。チャンネル登録よろしくお願いします。お問合わせや情報などは、こちらのアドレスまで ysplaning@gmail.com   Instagramでも情報発信しています   Facebookページ随時更新中 noteで無料&投げ銭方式のコンテンツを公開しています。

2013年07月

BMW i3は、量産レンジエクステンダーEVの第一号か?



ミライのクルマに注目するクラスタ界隈では、BMWのピュアEVかつレンジエクステンダーEV「BMW i3」が旬の話題となっておりますが、おそらく、これは初めての量産レンジエクステンダーEVではないかと思う今日このごろ。

いや、まずは22kWhのリチウムイオンバッテリーで、航続距離130~160kmのピュアEVに注目すべきなのでしょうが、正直にいってEVとしてのスペックに目新しさはなし。日産リーフが24kWhで228km、三菱i-MiEVが16kWhで180kmなので、いくら計測モードが異なるとはいえ、想定の範囲内。正直にいえば、Cd値0.29という空力性能、アルミシャシー&カーボンボディで軽量化というプロフィールからすると、もうちょっと頑張ってほしいところ。仮に日本のJC08モードで200~220kmくらいだと、重さと総電力量からすると順当で、驚きはありませんから。

BMW_i3_2014MY_0048


というわけで、自ずと注目は、あくまでもオプションとして用意されているレンジエクステンダー仕様になってしまいます。

レンジエクステンダーEVというのはエンジンで発電モーターを回し、その電力で駆動モーターを回している点で、いわゆるシリーズハイブリッドと似ています。その意味ではプリウスや今度のアコードハイブリッドなどの電気式CVTの部分と同じシステムと思ってしまいがち。


でも、それは間違いだと思うのです。



BMW_i3_2014MY_0085

シリーズハイブリッドというのは、あくまでもエンジンで発電して、それによって駆動モーターを動かすわけです。単純化すると、そのシステムには二次電池がなくても構わないというか、二次電池がなくても成立するのがシリーズハイブリッドといえましょう。もちろん、エネルギー回生や効率を考えると二次電池は必要なのですが。仮に二次電池がないと考えるとエンジンの発電能力>モーターの出力でなければなりません。二次電池を考慮しても、エンジンの発電能力≒モーターの出力であるのがシリーズハイブリッドといえましょう。

一方、レンジエクステンダーEVは、外部給電のかわりに、車両に搭載した発電機(エンジンと発電モーター)によってバッテリーを充電するのが基本にあるので、発電機で生み出した電力をそのまま駆動モーターが消費するというフローは考慮していないとするのが妥当。シリーズハイブリッドではドライバーのアクセル操作(駆動モーターの要求)に合わせてエンジン出力を変化させる必要もありますが、レンジエクステンダーEVでは、バッテリーのSOC(充電状態)だけを見て、発電機を作動させればいいというのが基本になります。ですから、モーターの要求する出力にレスポンスさせる必要もありません。そうした部分はバッテリーが完全に担当、クルマが走っていようが止まっていようが、SOCに応じてエンジンは淡々と発電していればOKというのがレンジエクステンダーEVの考え方。

それゆえ、BMW i3は最高出力25kWというエンジンで問題ないわけです。しかもスペックを見ると最高出力・最大トルクとも同一回転で発生しているので、一定回転で動かす前提のエンジンではないかと想像できるところでもあり。冒頭で記した『初めての量産レンジエクステンダーEV』というのは、ここがポイント。これまで、もっともレンジエクステンダーEVに近い存在だったシボレー・ボルトにはごく一部とはいえ、エンジンで直接タイヤを駆動するトルクフローがあるようなので、むしろシリーズ・パラレルハイブリッドといえますし。

もちろん、現時点はBMW i3にもそうしたトルクフローがないとは断言できませんが、ピュアEVが基本にあるわけで、レンジエクステンダー用エンジンをオプションで積んだときに駆動系を作り変えるというのは生産規模からすると、ほとんど考えられません。よって、このモデルが量産レンジエクステンダーEV第一号と捉えて妥当なのでは、と思う次第です。

もっとも、振り返るとトヨタ初のハイブリッドカーである「コースターハイブリッド」を再考察する必要ありかも。当時はシリーズハイブリッドに分類されていましたが、そのエンジン出力を考えると、レンジエクステンダー寄りだったといえるかもしれません……。





 

スズキ・スイフトは”ファン”というイメージムービーに思う


Suzuki Swift: Please, have fun! The New Leading Sports Compact Vehicles shown in this movie are of Europe specification.
日本同様にマイナーチェンジを実施した欧州スイフトのプロモーションムービーは”FUN”がキーワード。生産もハンガリーで行なっているはずのスイフトですから、ほとんどの登場人物(開発・生産スタッフ)が現地スタッフとなっている中、チーフデザイナーの松島氏が軽妙な演技を見せているのが印象的なムービーでもあります。

しかし、こうしてスイフトの狙いを見ていくと、もしモータースポーツをプロモーションとして利用するのであれば、かつてのJWRCではなく、いまならWTCCがマッチしそう。

ご存知の通り、WTCCは世界ツーリングカー選手権といいながら、西欧エリアではイタリア、ポルトガルで開催されている程度でドイツも、イギリスも、フランスもカレンダーから外れています。そのかわり、スロバキア、ハンガリー、ロシア、オーストリア(微妙?)といった東欧圏がメイン。ちなみにブラジルはありませんが、南米ではアルゼンチンで開催されますし、もちろん中国でも開催されています。


すなわち自動車市場が成熟した西欧圏よりも、東欧圏を中心に伸びしろのある新興市場をターゲットにプロモーションを行なうモータースポーツ・イベントという意識を感じることができましょう。ブランドや自国のメーカーに対するロイヤリティの強い熟成した市場は、既得権的にシェアが固まっている部分もあるので、WTCCというイベントが、そうではない地域を軸に回していくというのは非常に合理的ですし、ある種の伝統に縛られないイベントとしてはメーカーにも魅力ありといえそう。

レギュレーション的にも一年間で使えるエンジンが一基であったり、ローコストを意識している部分もあるようですからスイフトに限らず、スズキの某車でWTCCというのはブランディングとしてマッチしそうな印象。

そんなことを”FUN”が連発するイメージムービーを見ながら思った次第。もっとも、欧州でレース活動を行なうのはコリゴリかもしれませんけれど。




swift_mmc_2013718

BMWのレンジエクステンダー用エンジンは軽自動車と同等か

BMW_i3_2014MY_0017
BMWが電動車両用として立ち上げた新ブランド「BMW i」。その第一弾モデルとなる「BMW i3」がニューヨーク、ロンドン、北京において同時発表。ずんぐりむっくり系のスタイリングと、観音開きドアがコミューターぽくて萌える存在ではありますが、ずっとピュアEVとして開発されていると認識していた「BMW i3」は、じつはレンジエクステンダー仕様も用意されるとのこと。

BMW i3レンジエクステンダー発電用エンジン
エンジン形式:2気筒 4バルブ
総排気量:647cc
ボア:79mm
ストローク:66mm
最高出力:25kW/4300rpm
最大トルク:55Nm/4300rpm
圧縮比:10.6

排気量は軽自動車クラスですが、発電機用に最適化されているのは、出力特性から感じられるところ。かなり定回転で作動させていそうな雰囲気ではあります。 なお、駆動モーターの最高出力は125kWなので、このエンジンで発電して、すぐに駆動で使ってしまうような自転車操業状態では、かなりパフォーマンスには厳しい印象。

早めにレンジエクステンダーモードに移行して、バッテリーを充電することで、航続距離を伸ばすという、まさしくレンジエクステンダーな仕様となっている模様。

そして、エンジンを搭載しないピュアEV仕様では、まんまエンジンを取り外した状態で駆動モーターだけが残るレイアウト。エンジンの抜けたスペースは最小限かつ立派なステーで支えられております。
BMW_i3_2014MY_0001
 
かつて初代インサイトを、そのコンセプトカー臭に引き寄せられて購入してしまった自分としては、このBMW i3にも、そうしたコンセプトカー&プロトタイプ臭を感じてしまう次第であります(汗) 

ベンツの多段変速は7から9へ奇数でつなぐ

benz_9g-tronic


The first nine-speed automatic transmission with torque converter, the 9G-TRONIC for premium vehicles, is celebrating its world premiere: equipped with the innovative power transmission, the E 350 BlueTEC is set to become one of the most fuel-efficient six-cylinder diesel models in its class. 

世界的に縦置きATではZFやアイシンの8ATがスタンダードになりつつあるタイミングで、7G-TRONIC(7速AT)にとどまっていたメルセデス・ベンツが、文字通り”一歩抜け出す”新オートマをリリース。

その名も『9G-TRONIC』 、トルコン・プラネタリーギアを使った縦置き9速オートマの登場であります。9速ATとしてはZFの9HPシリーズもありますが、そちらは横置き対応ですので、縦置きの乗用車用9速ATとしては、2013年9月という発売段階では世界唯一かもしれません。



気になるポイントは2つ。いずれも、すでにツイート済み。 

そして、もうひとつ大事な入力トルクは1000Nm。ついでにメモしておけば、クラッチハウジングはアルミ、ミッションハウジングはマグネシウム、オイルパンはプラスチック製だとか。
 
以前にも書いたことがありますが、プラネタリーギアの組み合わせで変速段を作ることのできるATでは、ギア数とギアセット数がイコールにならないので、意外に重量やサイズを大きくせずとも多段化が可能というのを地で行っているような「9G-TRONIC」。

そういえば、メルセデス・ベンツの縦置きパワートレインを日産(インフィニティ)が使うという話ですが、将来的には、この9速ATが日産にも載るのでしょうか。ジヤトコのひと踏ん張りにも期待したいところではあります……。 

アメ車新時代? キャデラック初のV6ツインターボはショートパイピングがポイント



Cadillac’s first-ever Twin-Turbo, available on the 2014 CTS Vsport midsize luxury sedan and XTS Vsport full-size luxury sedan in the U.S. this fall, kicks turbo lag to the curb with a unique combination of smaller turbochargers, top-mounted throttle body and shorter air pathways.

The Cadillac Twin-Turbo V-6’s patented air flow design, which eliminates circuitous heat-exchanger tubing, makes the most of engine packaging efficiency to improve torque response time over other air flow designs.

Rated at 420 horsepower in the all-new 2014 CTS Vsport and paired with Cadillac’s first eight-speed transmission, the Twin Turbo is one of the most power-dense engines in the midsize luxury sedan segment, rated at an SAE-certified 420 horsepower (313kw) and 430 lb-ft of torque (583 Nm).

Air flow routing volume is reduced by more than 60 percent when compared with a conventional design that features a chassis-mounted heat exchanger. The water-to-air cooler system achieves more than 80 percent cooling efficiency with only about 1 psi (7 kPa) flow restriction at peak power for fast torque production.

しっかりとリサーチしたわけではないのですが、リリースによればキャデラックとして初めてのV6ツインターボが登場、とか。

しかも、ただダウンサイジング・トレンドに乗って3.6リッターV6ツインターボを出したというレベルではなく、そのデザインに生産性を含めたアイデアが盛り込まれているのがポイント。

そのシンボルといえるのがパワートレインのコンパクト化と、そのためのパイピングのショート化。 

通常、ターボチャージャーで過給され、高圧になった吸気はインタークーラーで冷やされます。そして、インタークーラーは空冷式がほとんどなので、ターボチャージャーからグリル裏やバンパー裏のインタークーラーへパイピングが伸び、またインタークーラーからスロットルボディも長いパイプがつなぐことになるわけです。

ですが、キャデラック(ゼネラル・モーターズ)が、このV6ツインターボで選んだのはサージタンク一体型の水冷式インタークーラー。こうすることによりパイピング(空気流路)は60%以上短くすることができたそう。また、生産性の面においても、インタークーラーまでサブラインで組み付けて、メインの組立ラインに投入することが予想でき、有利な印象を受けるところ。

もっとも、水冷式インタークーラーをサージタンクに内蔵させるという手法は、すでにVWが使っているので画期的に目新しいというわけではありませんが、最新トレンドをしっかりとフォローしてくるあたりに、ゼネラル・モーターズの技術力というか、キャッチアップしている感じを受けてしまうのでありました。

072613-Cadillac-TwinTurbo


 

第三世代BMWミニのデザインスタディは、しっかりヘリテージ。

新世代BMWミニのティザーが始まっておりますが、続けざまに今度は「ミニ・ビジョン」なるコンセプトスケッチが公開。なんとも、まあ見事にニューMINIのスタイルを受け継いでいるように見えます。さっそくヘッドライトがエンジンフードにくっついてるのかどうかが気になってしまうほど。

P90128972_highRes
MINI Vision. An exclusive look at MINI design of tomorrow.


P90127255
そして、公式のスクープショット(?)と見比べれば、ホイールアーチやルーフラインから、かなり実際の姿に近いデザインイラストであろうと想像できるところで、オリジナルのOLD Miniにはショートホイールベースでキビキビ動くイメージがありましたが、BMWミニのロングホイールベース化は避けられないトレンドのよう。

もともとのパッケージは「小さなボディ、快適なキャビン」という理詰めの実用車だったミニではありますが、ホットハッチ的、スポーティコンパクトというキャラクターを抽出して再構築したのがBMWミニだとすれば、パフォーマンスアップというか、常用域の高速化を考えると、こうしたシルエットになるのもやむなしなのでしょうか。





インテリアでは2ペダルが基本となっているのが、ある意味で注目。DCT的な何かを装備するという前提だと想像できますので。もしくは、アメリカ市場を睨んでいればZFの9速ATでしょうか?

そしてミニの伝統であるセンターメーターを模したインフォメーションパネルはついに丸型ディスプレイを目指すよう。せっかくセンターメーターを模した造形でも、その中にスクエアなモニターを収めるのでは、少々興醒めという印象もありましたので……。

BMW_Mini_vision1307006

動画はOLD Miniからの伝統を受け継いでいるようなオープニングとなっておりますが、こうして「ミニ・ビジョン」のイラストを見ている限り、初代のBMWミニ(R50)がもはやヘリテージで、その伝統を受け継いで、進化させたという印象強し、なのでありました。



記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

月別アーカイブ
  • ライブドアブログ