ミライのクルマに注目するクラスタ界隈では、BMWのピュアEVかつレンジエクステンダーEV「BMW i3」が旬の話題となっておりますが、おそらく、これは初めての量産レンジエクステンダーEVではないかと思う今日このごろ。
いや、まずは22kWhのリチウムイオンバッテリーで、航続距離130~160kmのピュアEVに注目すべきなのでしょうが、正直にいってEVとしてのスペックに目新しさはなし。日産リーフが24kWhで228km、三菱i-MiEVが16kWhで180kmなので、いくら計測モードが異なるとはいえ、想定の範囲内。正直にいえば、Cd値0.29という空力性能、アルミシャシー&カーボンボディで軽量化というプロフィールからすると、もうちょっと頑張ってほしいところ。仮に日本のJC08モードで200~220kmくらいだと、重さと総電力量からすると順当で、驚きはありませんから。

というわけで、自ずと注目は、あくまでもオプションとして用意されているレンジエクステンダー仕様になってしまいます。
レンジエクステンダーEVというのはエンジンで発電モーターを回し、その電力で駆動モーターを回している点で、いわゆるシリーズハイブリッドと似ています。その意味ではプリウスや今度のアコードハイブリッドなどの電気式CVTの部分と同じシステムと思ってしまいがち。
でも、それは間違いだと思うのです。
山本晋也 【Yamamotosinya】@Ysplanning
そのうち、シリーズHEVとレンジエクステンダーEVの違いをどこかで明確にしておかないと、用語として混乱しそうだな~
2013/07/30 11:30:56

シリーズハイブリッドというのは、あくまでもエンジンで発電して、それによって駆動モーターを動かすわけです。単純化すると、そのシステムには二次電池がなくても構わないというか、二次電池がなくても成立するのがシリーズハイブリッドといえましょう。もちろん、エネルギー回生や効率を考えると二次電池は必要なのですが。仮に二次電池がないと考えるとエンジンの発電能力>モーターの出力でなければなりません。二次電池を考慮しても、エンジンの発電能力≒モーターの出力であるのがシリーズハイブリッドといえましょう。
一方、レンジエクステンダーEVは、外部給電のかわりに、車両に搭載した発電機(エンジンと発電モーター)によってバッテリーを充電するのが基本にあるので、発電機で生み出した電力をそのまま駆動モーターが消費するというフローは考慮していないとするのが妥当。シリーズハイブリッドではドライバーのアクセル操作(駆動モーターの要求)に合わせてエンジン出力を変化させる必要もありますが、レンジエクステンダーEVでは、バッテリーのSOC(充電状態)だけを見て、発電機を作動させればいいというのが基本になります。ですから、モーターの要求する出力にレスポンスさせる必要もありません。そうした部分はバッテリーが完全に担当、クルマが走っていようが止まっていようが、SOCに応じてエンジンは淡々と発電していればOKというのがレンジエクステンダーEVの考え方。
それゆえ、BMW i3は最高出力25kWというエンジンで問題ないわけです。しかもスペックを見ると最高出力・最大トルクとも同一回転で発生しているので、一定回転で動かす前提のエンジンではないかと想像できるところでもあり。冒頭で記した『初めての量産レンジエクステンダーEV』というのは、ここがポイント。これまで、もっともレンジエクステンダーEVに近い存在だったシボレー・ボルトにはごく一部とはいえ、エンジンで直接タイヤを駆動するトルクフローがあるようなので、むしろシリーズ・パラレルハイブリッドといえますし。
もちろん、現時点はBMW i3にもそうしたトルクフローがないとは断言できませんが、ピュアEVが基本にあるわけで、レンジエクステンダー用エンジンをオプションで積んだときに駆動系を作り変えるというのは生産規模からすると、ほとんど考えられません。よって、このモデルが量産レンジエクステンダーEV第一号と捉えて妥当なのでは、と思う次第です。
もっとも、振り返るとトヨタ初のハイブリッドカーである「コースターハイブリッド」を再考察する必要ありかも。当時はシリーズハイブリッドに分類されていましたが、そのエンジン出力を考えると、レンジエクステンダー寄りだったといえるかもしれません……。